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横浜地方裁判所 昭和53年(ヨ)1417号 決定

債権者 株式会社川崎パブリツクコース

債務者 国

訴訟代理人 小沢義彦 座本喜一 水庫信雄 石井宏 ほか九名

主文

本件申請を却下する。

申請費用は債権者の負担とする。

理由

第一債権者の申請の趣旨及び理由とこれに対する債務者の答弁及び反論は別紙記載のとおりである。

第二当裁判所の判断

一  行政事件訴訟法四四条によれば、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については民事訴訟法の規定する仮処分をすることができない旨規定されているところ、債権者は、本件仮処分において、甲、乙、丙の土地の従前の占用許可処分による右各土地の使用に関して発生した権利(その具体的権利の検討はしばらく措く。)に基づき、右各土地の妨害排除を請求しているもの、すなわち、債務者の行政代執行等の公権力の行使を阻止しようとしているものであり、債務者が行政行為としての外観をも備えず実力で債権者の右各土地の占有を妨害する危険性を窺うことのできない本件の場合には、本件仮処分申請は同法四四条の規定に牴触し許されない。

二  債権者は、同法二五条に基づき、債務者の右各土地の占用不許可処分に対する執行停止を申立てたが、許可処分に対する拒否処分の効力を停止しても法的には何ら保全されるものがないという理由により右申立が却下されたので、本件仮処分申請以外には債務者の右各土地に対する占有妨害を阻止する手段はないこととなり、従つて、本件仮処分申請は同法四四条に牴触するものではない旨主張するが、債権者の右執行停止の申立は、同法四四条に牴触するものではなく、従つて、債権者の主張自体失当であるし、又、仮に、右占用不許可処分自体は前記理由で執行停止の申立が認められないとしても、河川法七五条の河川管理者の監督処分、行政代執行法二条、三条の行政代執行に対する執行停止を求めることはできるから、債権者が債務者の前記公権力の行使を阻止する手段がないと言うことはできず、結局、債権者の申立は理由がない。

三  よつて、債権者の本件申請はその余の主張を判断するまでもなく理由がないからこれを却下することとし、申請費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり決定する。

昭和五四年七月二七日

(裁判官 豊永多門)

別紙〈省略〉

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